和歌山市内の在宅療養支援診療所

お知らせ
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約束の花火

真美さん(40歳)女性 直腸癌が再発し、卵巣や腹膜への転移があります。 

腸閉塞にもなり、人工肛門も造設しました。

   

在宅療養を始めて、5カ月、、、

この間にも、抗がん剤治療、痛みを伴う骨転移部への放射線治療など

その時その時に できる治療を、先生と相談しながら

継続してきました。

    

梅雨☔も明けて7月、、、

真美さんにとって、何か楽しめることができればいいなぁと思い

「真美さん、、、今 何かしたいことあるかな?」と尋ねました。

すると、「(姪の)あやかちゃん(仮名)と、花火する約束したんやけど

お天気が悪くて、延び延びになってるの」と教えてくれました。

 

それから2週間、、、

癌の痛みが強くなり、モルヒネの持続皮下注射を行っていますが、レスキューのボタンを押す回数も

多くなっています。

一日一日、さらに状態が厳しくなっています。

先生は、別室でお母さんにお話をします。

お兄さんお二人にも連絡をとり、『鎮静』について

「ご家族みんなで話し合って欲しい」とお伝えしました。

その夜から、話ができる程度に浅く『鎮静』を開始しました。

  

翌朝7時すぎ

痛みが強く、真美さんから先生に連絡が入りました。

訪問看護師の岡本さん(仮名)が、すぐに駆けつけてアセリオ®の点滴を始めてくれました。

「楽にして欲しい。このまま死ぬかも。。。」

   

先生と私が自宅に到着すると、点滴は終了し、痛みは少し落ち着いていました。

先生の顔が目に入ると

「楽にして。。。何とかしてぇ。。。」と。

うつらうつらしながらも、「お兄ちゃん、まだ(帰ってこない)?」と話します。

身の置きどころのないしんどさ、腰の痛み、お腹のはり、息ぐるしさ、、、

苦痛がとりきれません。

 

この日の朝、真美さんはお母さんに

「。。。わたし、もういいよな。。。。頑張ったよな。。。」と話したそうです。

そばにいるお母さんも、お辛い状況ですが、涙をこらえて

気丈にふるまってくれています。

夕方には、お兄さん達ご家族も揃います。

 

その日の予定の訪問診療を終えた車🚙の中で

「鎮静を深くする前に、あやかちゃんと約束した花火。。。何とかできんかなぁ。。。」と先生。

今の状態から考えれば、簡単なことではありません。

真美さんの気持ち次第です。

    

日が暮れて、、、先生は真美さん宅に向かいました。 

訪問看護師の岡本さん(仮名)も同行してくれました。。

お母さん、お兄さんたち、義姉さん、あやかちゃん、、、ご家族が揃っています。

  

先生が、真美さんに「あやかちゃんと約束してた花火、、、しようか?」と声をかけました。

真美さんは頷き、ベッドではなく「車いすに座る」と言いました。

とても座れるような状態にありませんでしたが

みんなで、真美さんを車いすに何とか座らせることができました。

庭に面した掃き出し窓の近くまで車いすで移動して、、、花火を手に持ちました。

しばらくの間、、、庭で花火をします。

あやかちゃんも楽しそうです。

真美さんは、その姿をしっかりと見つめています。

花火が終わり、、、

真美さんを囲んで、『家族写真』を撮りました。

   

ベッドに戻った真美さんにあやかちゃんが

「まみちゃん、花火 楽しかった! ありがとう」と言うと

真美さんは、あやかちゃんの手を握り、「ありがとう」と言って目を閉じました。

「今日はゆっくり寝ようね」と、岡本さんが声をかけると

小さく頷きました。

先生が、薬を調整(鎮静を深く)して、眠れるようにします。

   

ご家族そろっての『約束の花火』

真美さんの『生命力』のすごさに圧倒されながら、、、

『花火をする』という約束が叶ったことに安堵します。

      

「真美さん 40年の人生、、、本当によく頑張りましたね」と。

神さまからの声が聴こえる気がします。