和歌山市内の在宅療養支援診療所

お知らせ
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案外。。。優等生やろ

木曜日、N病院へ退院前カンファレンスに伺いました。

コロナ対策もあり、大きな会議室に全員集合! 

主治医の先生、患者総合支援センターの看護師さん

ケアマネージャーさん、訪問看護師さん、福祉用具の担当者さん、そして先生と私

奥さんも来てくれています。チーム松本(仮名)です。

   

遅れて、松本さんご本人(80代)が、病棟の看護師さんと車いすで到着しました。

下半身の浮腫みが強いことは、一見してわかりました。おおよそ3倍くらいに膨れ上がっているでしょうか。。

骨盤への転移があり、かなり辛いはずです。

入院前にあった腹部の痛みは、放射線治療の効果で治まっていました。

    

松本さんは、集まってくれたみんなに

自分のことを知っておいてもらいたいと、色々と思っていることや

入院生活で感じたことなどを話しくれます。

横にいた奥さんは

「お父さん、、、来てもらうのに、そんなうるさいことばっかり言わんでも」と言葉を制します。

頑固な一面も垣間見えます。

  (先生も私も、一般的に『頑固だと言われる人』・・・好きです)

そこを上手く取りなしながら、患者総合支援センターの看護師さんが

カンファレンスを進めてくれました。

  

土曜日に、N病院を退院しました。

自宅に伺い、今までの様子や入院中の状態なども

松本さんから直接、お話を聴かせてもらいます。

お薬も、今までは自分で管理してきました。松本さんなりのこだわりもあります。

オピオイド※1を使っていたので、頑固な便秘がありました。

出ていないわけではありませんが、便が硬くてすっきりとはしていません。

先生は、便秘を解消するための薬を処方しました。

 ※1オピオイド:医療用麻薬。がんの痛みを抑えるために用いる。副反応に便秘や眠気、吐き気を起こすことがある。

    

月曜日に訪問すると(効果てき面。1日に下痢が何回も続きました)

びっくりするほど便が出て、「かなわんなぁ」と言います。

先生は「薬 続けて飲んでくれたら、2、3日で、体になじんできて治まってくるからね。

できたら辛抱して、この薬 飲んでほしいんや、、、溜まっていた便がでると

あとは楽になるからね」と説明をしました。

   

とは言え、便の回数が増えることは

下半身の浮腫みが強くて移動するのが大変な松本さんにとっては、とても辛いことです。

薬を飲んでほしいと伝えたものの、我慢して飲み続けるのは難しいかもしれないと

思っていました。(ごめんなさい🙇)

  

3日後に訪問すると、、、

「便 出て大変やったけど、先生に言われたから、薬は続けたよ。

昨日ぐらいから、普通に戻ってきたわ」とニッコリの松本さん。

『頑固さ』は『辛抱強さ』でもあります。

先生はその言葉を聞いて

「続けて飲んでくれたんかぁ。良かったよぅ。下痢がしんどいから、飲むのやめてるんちゃうかと

思てたんよ。ありがとう」と言いました。

松本さんが、先生に聞こえないように私の耳元で、一言。

「先生に飲まなあかんって、叱られたからなぁ」と。

(叱ってはいませんが。。。)

    

しばらくの間、奥さんも交えながら四人でお話をします。

今までのお仕事のこと、趣味のこと、奥さんとの出逢い

手先がとても器用で、紙細工や紐細工を自分で作っていたこと 等々

松本さんは、いつも高めの座椅子に座っています。

この座椅子も自分で使いやすいようカスタマイズ(足の浮腫みがあっても立ち上がりがしやすいように工夫)

していました。

(回転式の市販の座椅子の上に、奥さんが縫った袋に20㎝程の高さになるように

板状の発砲スチロールを入れて、その上に車いす用の除圧クッションを置いています)

座椅子に座った松本さんの横で

浮腫んだ足と痛みが出るという膝をしばらく温めていると、、、

またまた、ぽそっと一言。

「案外。。。優等生やろ」とにんまり。

  

松本さん、『お茶目です』

そして、57年連れ添ったしっかり者の奥さんのことを

「若い頃はなぁ、今よりちょっとスリムで、ぽっちゃりとして、可愛らしかったんやで」と

奥さんや先生に聞こえないように、小さな声で教えてくれました。

『ちょっと、照れ屋さん』です。