和歌山市内の在宅療養支援診療所

お知らせ
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忠犬バロン... 『お父さん、お帰り‼』

病院から連絡を頂きました。

急遽、翌日退院前カンファレンスを行うことになりました。

 

退院前カンファレンスで、患者さんの状態を教えていただくと、

病状的にはかなり厳しいものでした。

患者さんに意識はありません。

それでも、ご主人を自宅に連れ帰り、愛犬バロン(仮称)に会わせたいと。。。奥さんは決心されました。

ご自宅に戻ったときのために、奥さんは看護師さんと一緒に、痰の吸引の練習もしました。

 

看護師付きの民間の救急車を手配し、翌日の午後に退院することになりました。急展開です。

おうちで必要な介護用ベッドやエアーマット、酸素や吸引器は、午前中に自宅に運んでもらえるようになりました。

 

自宅への移送中のことについて確認します。

もし救急車の中で呼吸や心臓が止まったら、

病院に戻るか それとも そのまま自宅に帰るか・・・

奥さんは「自宅に帰ります」と、しっかりとした口調で答えました。

それだけの覚悟が必要だったんです。。。

 

翌日、病院からは予定通り民間の救急車で出発したと連絡がありました。

訪問看護師さんが自宅で迎えてくれる段取りです。

 

帰ってから、バロンは帰ってきたお父さんの傍をひと時も離れず、一緒にベッドの上です。

訪問看護師さんがお父さんに触ろうとすると、警戒して「ウー」と唸ります。

バロンに声をかけながら、体温や血圧などを測定したり、痰を吸引します。

(奥さんも上手に吸引ができます)

バロンは、大好きなお父さんが戻り、顔をなめたり体の上に顔や手をのせたりしています。

 

お父さんの意識はありませんが、

バロンの鳴き声やなめていること、体の重みなど、感じていることでしょう。

奥さんも声をかけてくれます。

住み慣れた我が家に帰ってきたことは、きっと分かっています。

 

先生と私が少し遅れて訪問すると、やはりバロンに唸られました。

「ごめんね。お父さんを触らしてね」と声をかけて、

瞳孔を見ると、左が大きくなっています。反射もありません。

尿も出ていません。

病院から点滴を継続してくれていましたが、昨日に比べ一段とむくみが強くなっています。

 

先生が奥さんとお話をされます。

点滴を入れることのメリットとデメリットについてお話し、点滴を中止することになりました。

 

しばらくすると、呼吸がおかしくなりました。

少し無呼吸があります。

バロンが、触ったりなめたりすると、呼吸が戻ります。

まるで、「お父さん、しっかり息をして!」と言っているかのようです。

ここからは、お父さん自身の生命力にかかっています。

 

翌日、訪問に伺うと、

バロンはお父さんの頭元で、顔や鼻、口元など、しっかりなめてきれいにしてくれています。

呼吸も安定しています。無呼吸もありません。

バロンは、自分のご飯もそこそこに、

トイレにも行かず、つきっきりで看病してくれています。

気管切開部分のガーゼを取ってしまいました。

バロンが胃管を抜きそうだと訪問看護師さんから連絡がありました。

痙攣が止まっているので、薬の注入を中止し、先生の指示で胃管も抜きました。

管を抜いた後、鼻を観ると、鼻孔が少し赤くなっています。

きっとバロンは痛そうだと思って、抜こうとしたのだと思います。

赤く腫れた鼻をなめると、「有難う」とも言いたげに、抜いてくれた看護師さんの手もなめてくれたそうです。

 

 

忠犬バロンです。

 

お父さんも、ご家族の献身的な介護に応えるかのように

頑張ってくれています。