和歌山市内の在宅療養支援診療所

お知らせ
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不安と緊張

昨年の夏。。。

遠藤さん(仮名)(80代)は、A病院を退院したあと在宅医療を受けながら

ご自宅で息子さんと暮らしていました。

認知症もあり、受け答えははっきりとしませんが、調子のいい時はニコニコしてくれます。

息子さんを見ると、さらに『ニコニコ』です。

このお母さんの『ニコニコ』があるならと

息子さんは転院を断り、ご自宅での療養を希望されました。

  

在宅医療を開始したものの、しばらくすると発熱と嘔吐を繰り返します。

ご自宅で、できる限りの治療を行うのですが、病状が安定しません。

認知症があるので、「しんどい」と言葉では言えませんが、表情・体の曲がり方や力の入り方で

訴えてくれます。

この状況では、遠藤さん自身も辛いですが、看ている息子さんも辛く、疲労も伺えます。

先生は、これ以上の自宅での療養の継続は難しいと判断し、息子さんと相談しました。

精査もかねて、B病院に入院することになりました。

    

しばらくして、C病院に転院したと連絡をいただきました。

少し状態が安定したのでしょう。ほっとしました。

それから数カ月、、、

「遠藤さんと息子さん あれから、どうされているかなぁ。。。」と気になっていました。

    

近畿にも寒波が到来した年末のある日、、、

予定の訪問診療を終えてクリニックに戻ると、玄関に男性もののスニーカーがあります。

「ん? 誰か、来られてる?」と思いながら入っていくと、遠藤さんの息子さんです。

北端さんが話を聴いてくれていました。

  

引き継いで、先生と一緒に話を聴かせてもらいました。

遠藤さんは、心臓の状態が悪くなり、再度 B病院に転院されていました。

今日、循環器の先生から、息子さんにお母さんの病状についての説明がありました。

「。。。心臓の弁に、なんか くっついていて。。。いつ、飛ぶかもわからんって。。。

歳も歳やし、これ以上の治療はできないって言われて。。。」

「今は、『バンコ・・・? 』とかいう薬を点滴してもらってるんやけど

いつどうなるかはわからないって」

「今日、主治医の先生と話した後、ケアマネさんとは電話で話をしたんやけど。。。

気持ちが落ち着かなくて、、、つい ここ(城北の杜)に来てしまった」

「もう、訪問診療を受けてないから、申し訳ないなって思ったけど、このまま家に帰っても

一人で(不安で)どうすることもできないって思って」

「前にも一度、クリニックの玄関前まで来たけど、、、その時はやっぱり悪いなぁって思って帰った」

                                          などなど  

話を聴かせてもらい、遠藤さんの様子はだいたいわかりました。

そして、息子さんの不安と緊張が痛いほど伝わってきました。

  

北端さんが入れてくれた温かいコーヒーを飲んでもらいながら、、、しばらく話をしました。

話し始めたときは、息子さんの体は震えていましたが、それも落ち着きました。

「、、、話して、気持ち ちょっと落ち着いてきた。

病院の看護師さんも、『コロナ禍で面会はできないけれど、お母さんの状態は毎日でも

伝えることはできるよ』って言ってくれてね。忙しいから、迷惑かけるけど。

ありがたかったわ」と話されました。

  

病状が悪くなれば、、、

ご本人やご家族は、バッドニュース(悪い知らせ)を聞くことが多くなります。

それによって、不安になったり、緊張したり、混乱したり... そういうことがしばしば起こりえます。

バッドニュースを聞くこと自体も辛いことですが

その不安や緊張をお独りで抱えるのはもっと辛いことです。

クリニックに来て、少しでも気持ちが楽になってもらえたなら、本当に良かったです。