和歌山市内の在宅療養支援診療所

お知らせ
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マイペース  ③人生の師

ある日のこと

診察を終えてお話をしていると、さよ子さん(仮名)が「お出かけしたらいかんかねぇ?」と。

どこか行きたいところがあるのかと確認すると

「お買い物。。。 気分転換に近鉄にでも行きたいわぁ」

もちろん、先生はOKです。

「私ひとりでは無理よ」と娘さんは困り顔。下血を繰り返しているのでさすがに心配です。

そこで訪問看護師の矢中さん(仮名)に相談しました。

「一緒に行きます‼ 娘さんと相談して日程調整しますね」とすぐに返事がありました。

      

「したいと思うことを、出来るようにする」

矢中さんはじめ 訪問看護師さんたちは、いつも手伝ってくれます。

      

木曜日の13時半に近鉄で矢中さんと待ち合わせることになりました。

当日の12時半、訪問診療に伺ったところ、、、

もうお着替えは済んでおり、お出かけスタイルでばっちりです。

やや興奮気味。。。 血圧を測ると上が170... です。

もともと高血圧はありますが、これは久々のお出かけで「わくわく」の影響でしょう。

朝から便も出てすっきりしています。

  

先生    「何、買うの?」

さよ子さん 「何ってね。。。 服はいっぱいあるから、もういらないでしょ。

        見るだけでも楽しいしね。 食べるものも見たいしね」

先生    「気をつけて行ってきてね」

さよ子さん 「はぁ~ぃ」   いつも以上に、にこやかです。

矢中さんには、少し興奮気味で血圧が高くなっていることを連絡しておきました。

   

その日の夕方、矢中さんから、、、

「パジャマを5枚買いました。地下でお菓子と お粥のお供になるつくだ煮昆布なども買いました。

とても楽しそうです」と満面の笑み。

(写メ付きの報告が届きました)

お買い物が終わり、娘さんが運転するピンクの車の助手席に座り

満足気に去って行く さよ子さん。

矢中さんとは現地解散です。さよ子さんは無事に自宅に戻りました。

  

「望みが叶った一日」でした。

  

次に訪問するとおしゃれなパジャマを着ています。

先生が「これかぁ? 噂の高級パジャマ。。。 やっぱり肌触りがちがうんかな?」と。

娘さんが「そうよ。ワコールだもん!」と教えてくれました。

さよ子さんは「どこに出かけるわけでもないからね。パジャマぐらいはおしゃれしてね。

近鉄 楽しかったわぁ。また行きたいわ。連れて行ってね」と話されます。

「矢中さんが一緒に行ってくれたから安心して行けたけど、私ひとりじゃ。無理よぅ。。。」と娘さん。

(お母さんには聞こえていません)

   

さよ子さんは「いつ死ぬかもわからんからね」とよく言います。

(本当に人の最期は予測不能です)

元気な時に比べれば、食べる量も少なくなっています。

出かけることも自由にはいきません。

体調も日によってしんどかったり、少しマシだったり。。。

一日の中でもしんどかったり、気分が少し良くなったり。。。

夜も眠れたり、眠りにくかったり。。。

そんな日常の中で、ご自分で着々と準備をされています。

「亡くなったときにね、これ着せてね」と、家紋付の上品な秋桜色の着物と帯も自分で選びました。

 

「天晴れ」な生き方です。

  

目の前で、その人の真摯な生き方を見せてもらっていると

私の方が、「人生を教えてもらっている」「生き方を学ばせてもらっている」と感じます。

      「しっかりと生きているか?」

      「奢ることなく真摯であるか?」

      「役割を果たしているか?」

      自分自身の『生き方』を問われている気がします。

   

患者さんご本人やご家族の しんどさや辛さ、我慢から思うと

私たち医療従事者にできることって、「微力だなぁ」と感じることが多々あります。

でも、最期の最期まで

「患者さんやご家族さんがいつも通りにお家で過ごせるように

生きるため』のお手伝いをさせてもらいたい」と思っています。