リハビリの甲斐あって、このところ先生が訪問すると、毎回座って出迎えてくれます。
座っても血圧が下がらなくなりました。
「先生に会う前に身だしなみ整えて男前にしとかんとね」と訪問看護師さんに促されて、髭剃りも自分でやっています。
ところが、ある日伺うと、いびきをかいて眠っていました。
眠っている状態で呼吸を見ていると、舌が落ち込んでいつもと様子が違います。
声をかけると、うっすらと眼をあけました。
会話はできますが、呂律が少し回っておらず、言葉が聞きとりにくい感じです。
つじつまの合う会話もできますが、自分のペースで色々なことを話します。
『せん妄?』
皮膚の状態を見ると乾燥しており、つまんだ皮膚の戻りも悪く、脱水兆候が現れています。
奥さんに、この1週間の状態を確認します。
昔のお話を何時間もしていたり、ベッドの上で趣味だった釣りの仕草をしていたり、
突然立ち上がって歩いていたり...
言われてみれば、なんとなく様子がおかしかったとのこと。
せん妄の原因はたくさん考えられますが、まずは脱水を改善するため点滴を行うことになりました。
訪問看護師さんに点滴をお願いし、様子を見てもらいます。
いつもと違う○○さんの様子を見て、奥さんも不安が強くなります。
先生は奥さんに「せん妄」について説明し、おかしな行動の時にどう対応したらいいのかも伝えました。
3日後、様子を見るために訪問診療に伺いました。
いつものように部屋に入っていくと「おはよう!」とすっきりした表情です。
せん妄症状はなくなりました。
「復活してるやん‼」と先生。
○○さんはベッドの端に腰かけて、足を組んでいます。
(白い半そでのシャツとリハビリパンツ姿です。)
先生はベッドの横に置かれたポータブルトイレの座椅子に座ると、
二人で、コロナの話、野球の話、政治の話... 色々と話しています。
部屋の入り口の所に座った奥さんと私は、この様子を遠巻きにみながら、
「先生がポータブルトイレに座っているし、○○さんリハビリパンツ一丁やし
ちょっと笑える光景…。なんだか、ほのぼのやねぇ~」と、二人の会話を邪魔しないようにお話をします。
(実は、この『リハビリパンツ一丁』にも意味があります。
ズボンの上げ下ろしが間に合わないと汚してしまうことになり、奥さんに負担をかけてしまうからです。
○○さんなりの奥さんへの思いやりなのです。)
せん妄から早く回復して よかったよかった。。。
奥さんも笑顔で胸をなでおろしていました。
この後
先生の「○○さん、さぁ、リハビリ頑張って、桜見に行こなぁ~」で、本日の訪問診療は締めくくられました。
○○さん、ファイト です‼
おしゃれなリハビリシューズもゲットしました。やる気満々です。