肺炎をおこして、入院されました。
病院に伺うと、慣れない環境で、緊張も強く体に力が入っています。
いつものように顔の前で、目線を合わせて、
「○○さぁ~ん」と声をかけてゆっくり手を振っても、うつろな感じで反応がありません。
手を握って、しばらく様子を見ていました。
抗生剤の点滴をしてもらっていました。
食事を食べないので、点滴を増やしたと主治医の先生が話してくれました。
耳元で、ゆっくりとした口調で
「ここは病院。・・・肺炎おこしてたから、点滴してくれてるよ・・・。
早く治して、お家へ帰ろうね~」と伝えました。
少しすると手に力が入り、いつものように『ぎゅう~』っと、手を強く握ってくれました。
しっかりと眼が開きました。
この様子を見ながら、先生と病院の主治医が相談をしてくれています。
もちろん、病院の先生や看護師さんは丁寧に優しく対応してくれていますが、
〇〇さんにとっては知らない場所で、初めての人がたくさん・・・
入院はとても大きな環境変化です。
ご自宅でも、訪問看護師さんに点滴を行ってもらうことができます。
早めの退院を、ご家族と相談することになりました。
先生は、病院での○○さんの状況をすぐにご家族に伝えました。
ご家族は、早めの退院を決心してくれました。
病院の玄関で、迎えにきた奥さん(自称 美人妻)に会うと、
車椅子の○○さんの表情が一気に柔らかくなりました。
安心されたのだと思います。
自宅に戻ってからしばらくの間は、
訪問看護師さんが、朝と夕方に状態の観察と抗生剤の点滴に行ってくれます。
訪問入浴も週に1回お願いし、お風呂に入ります。
リハビリも始まります。
奥さんと息子さんは、痰を出し切れない○○さんのために、吸引の仕方を覚えてくれます。
自宅に戻ったとたん、食事を食べだしました。
お話しもしています。
ご家族は一生懸命、むせに注意しながら水分や食事を取らせてくれています。
高齢の方は、一度体調を崩すと戻るにも時間がかかります。
調子がいい日とすぐれない日があり、それを繰り返します。
なかなか以前のようにはいきません。
日々心配しながらも、生活は続きます。
退院から約2カ月が経ちました。
夕方に訪問すると、理学療法士さんがリハビリを行っています。
ちょっと難しい顔をして、体に力を入れています。
足の運動が終わり、理学療法士さんがベッドの端に座らしてくれました。
最初は片手でベッド柵をもっていましたが、
しばらくすると、両手を膝の上において自分で座りました。
以前と同じその姿がとても嬉しくて、
「○○さん、すごい!! 頑張ってる。頑張ってる」と、思わず声をかけてしまいました。
そうすると、少し離れた場所で正面に座っていた私に、
目線を合わせて、しっかりと2回頷きました。
(本当は運動に集中してもらうために、そっと見守る方がよかったのですが・・・
理学療法士さんごめんなさい。)
認知症の方への関わりとして、ユマニチュードのケアが大切だと言われています。
見つめること。
触れること。
話しかけること。
立つこと。
介護をされてきたご家族が、実践してきたことです。
○○さんの頑張りはもちろんですが、
本来持っている○○さん自身の力を、最大限に発揮できるように、
ご家族が長年努力されてきました。
この日々の積み重ねが、今の○○さんの姿につながっています。
この冬を乗り越えて、暖かくなったら和歌山城の桜を
ご家族と一緒に見に行きたいですね・・・。