「東山さん(仮名)、パジャマのズボンあげるから、お膝 立てて、、、
合図するから お腰 上げてね」
「せーの、はい」
腰はほとんど持ち上がりませんでした。
「ちょっと、腰上げの練習しよかな。3回でいいよ。ゆっくりね」
「1か~い。。。。。2か~い。。。。。3か~い。。。。。はい、ありがとう。お疲れさま」
声をかけながら、3回だけ、膝立てをした状態で腰を持ち上げる練習をしました。
「これができると、オムツ交換するのも、パジャマのズボン着替えるのも、楽になるよ。
東山さんも助かるけど、娘さんも助かるんよ」と話しました。
東山さんは80代の女性で、心臓も悪く、脳のご病気もあります。
入院している間に、廃用症候群※1になっていました。
自力で起き上がることも難しく、ベッド上で1日を過ごしている状態です。
退院当日は、座ると血圧が下がってしまう状態でした。
年齢的なこと、病気の状況から考えると、一度低下した筋力をもとに戻すのは
かなり難しいことなのです。
※1廃用症候群:加齢や疾患が原因で長期に寝たきりになることで起こる、さまざまな心身の機能低下のこと。 筋力低下よる痩せや(筋萎縮)、関節の動きが悪くなること(拘縮)、飲み込む力が衰えると唾液や食べ物を引き込んで肺炎になること (誤嚥性肺炎)などが挙げられます。筋肉のほかにも「骨」(骨萎縮)「内臓」(心機能の低下)「神経」(起立性低血圧、圧迫性神経障害)「精神機能」(うつ症状、せん妄)などに影響を及ぼします。 廃用症候群に陥ると、回復するには、陥っていた期間の何倍もの期間を要すると言われています。 そうならないためにも、長期臥床(寝たきり)を避けるべきですが、やむを得ず長期臥床が必要となった場合でも、リハビリテーションすなわち体を動かすことで予防につながります。
先生 「東山さん、宿題やな。
次に僕 来るまで(2週間後)、練習しておいてくれる? できるかい?」
東山さん 「これぐらいやったら、できるよぅ!」
先生 「これやったら、訪問看護師さんやヘルパーさん、来てないときでも
寝たままできるしな」
東山さん 「できる。できる。歩けるようになりたいからね、がんばるわ」
先生 「一度に、たくさんの回数せんでいいからね。休憩しながらやっといてよ」
2週間後です。
部屋に入っていくと、すぐに「先生、宿題やったで‼」と、東山さん。満面の笑みです。
診察を終えて「じゃあ、宿題の成果 見せてもらおうか?」と先生が言うと
ベッドの上で、膝を立てて
「せーの、はい!できてるやろ!」話しをしながら、腰上げを見せてくれました。
腰の下には、握りこぶしがしっかりと入ります。(かなり、腹筋と下肢の筋力を使っています)
拍手です。👏
この一瞬で 東山さんが、一生懸命に『先生からの宿題』に取り組んだことがわかりました。
(訪問看護師さんやヘルパーさんも手伝ってくれたのだと思います)
「東山さん、背中を見せて欲しいから、向こう側 向いてもらおうかな?」と私が言うと
「起きよか?」と東山さん。。。
その一言と同時に、横向きになり、足をベッドから垂らして、さっと座りました。
先生も私も、びっくりです。今までとは動きが違う!速い!
ここにも、自主トレの成果は出ています。
座って、しばらくすると、、、
「一回 立ってみよか?」と、さらに先生は先のステップに進めます。
先生が支えながら、ベッドの柵を持って、立ち上がりました。やはり「すくっと」とはいきません。
自分で体をしっかりと支えるには、足の筋力が足りません。若干、ふらつき気味です。
先生は「踵の上げ下ろししてみよか」
東山さん、、、必死です。「こうか?」(転ばないように、腰を支えて見守ります)
2回しました。すぐに、ベッドに座ります。
「足に 力入らんなぁ。。。踏ん張れやんわぁ。。。」
座った状態で「踵の上げ下ろし」と「つま先を上げる」練習をしました。
「次は、これ頑張ろかぁ。
転んだら危ないから、(訪問)看護師さんやヘルパーさんがいるときにしてよ」と
先生からの宿題です。
東山さんは、笑顔で「先生、頑張るわぁ」と。
「頑張りすぎやんといてよ」と先生からの一言。。。
『寝たきりは、寝かせきり(の結果)』という言葉があります。
そうなってしまわないように
動ける可能性があるならば、少しでも動けるように。。。
東山さんが、ポータブルトイレではなく
『家のトイレに自分で歩いていく』
簡単なことではありませんが、それを目標にみんなで頑張ってます。
(気が早い先生はお庭を歩かせるつもりでいますが...)