和歌山市内の在宅療養支援診療所

お知らせ
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「世の中 捨てたもんじゃないね」

白井さん(仮名)、50代の女性の方です。

膵頭部癌で肝臓にも転移をしており、突発的に激痛が生じます。

入院中にどんなにオピオイド※1を増量しても、この激痛には効果がありませんでした。。。

 

息子さんから連絡があって、訪問看護師さんと連絡を取り合いながら駆けつけます。

訪問看護師さんは渋滞につかまり、今回は私たちが先に到着しました。

すぐに、痛みを抑えるためにアセリオ®※2の点滴を行います。

点滴が入り始め、5分もすると、、、痛みはすーっと引いていきます。

アセリオ®の点滴が効くのが幸いでした。

 ※1 オピオイド:医療用麻薬のこと。モルヒネやオキシコドン、フェンタニルなど国内では6種類使用できる。

 ※2 アセリオ®:アセトアミノフェンの注射薬。内服薬はカロナールのこと。

 

手を握って、様子をみていると

「痛み治まってきた。ありがとう」と、苦痛表情から一変。。。笑顔になりました。

 すると続けて、「世の中 捨てたもんじゃないね」と。

突然のこの言葉に私の頭の中は ?...?...?...

「、、、ごめんね。『世の中 捨てたもんじゃない』って、どういうこと?」

  

白井さんが、ゆっくりとした口調で話してくれます。

「今まで生きてきて、、、本当 いろいろ大変やったわ。

専業主婦してたけど、夫と別れて働き出してね、、、社会に出たら想像以上に大変で、、、

本当にしんどい時があって。。。

こんなん言ったらあかんのやけど『死にたい』って思ったこともあったんよ。

今回も家に帰りたいって言うたものの、どうなるんやろって不安で仕方なかった。

痛みもつらいしね、、、でも、、、こうして皆さん来てくれて

私のために必死でやってくれている姿を見てたら、帰ってきて本当に良かったって思うんよ。。。」

  

「息子はね。。。一人で抱え込んでしまうところがあってね。神経細いから、心配で。。。

今までは、『こんな(厳しい)世の中に、息子を一人残して逝くのが心配で、大丈夫かな?』って

思ってたけど、こんなにも助けてくれる人がいるんなら

日本の社会もまだまだ捨てたもんじゃないって思ったんよ」と。

 

20代の息子さんは、お母さんの退院に合わせて、介護休暇を取ってくれていました。

社会人としての礼儀もしっかりとされ、会社でも責任を持って仕事をされていることは

介護をしている姿を見ればわかります。

それでも、親の心配は尽きないものです。

「息子さんに言っといてね。何かあれば、いつでも『城北の杜』へ来てって。

何ができるかは分からんけど、話を聴くことはできるからね」と、お話しました。

 

ケアマネジャーさん、訪問看護師さん、薬剤師さん、介護用品の業者さん、訪問入浴のスタッフさん  

そして「城北の杜」が集結し

白井さんの自宅での療養、息子さんの介護を支えます。

白井さんのお友達も、毎夕仕事帰りに寄ってくれて、白井さんや息子さんをサポートしてくれています。

  

『世の中 捨てたもんじゃないね』

この言葉は

「チーム白井」 在宅医療として白井さんに関わる全ての人に対していただいた賛辞です。

嬉しい一言でした。