森山さん(仮名)80代の女性。お一人暮らしです。
息子さんは近くに住まわれています。
韓流ドラマ・ゲーム・食べることが大好きで、とてもユーモアのある方です。
肺癌を患っており、骨にも転移がありました。
薬を飲みこむのが辛くなり、モルヒネの持続皮下注射を開始しました。
ひとりで起き上がることもできなくなり、1か月が過ぎようとしていました。
年も明ける頃です。
仕事と介護の両立は大変ですが、息子さんとみんなで相談して、一日のスケジュールを組みました。
8時半~10時 訪問介護(ヘルパーさん)
10時半~ 訪問看護(訪問看護師さん)
12時~13時半 訪問介護
15時半~ 訪問看護
17時~18時半 訪問介護
夜から朝まで、仕事から帰った息子さんが付き添ってくれることになりました。
先生と私は、この予定の合間をぬって訪問診療に伺っています。
食べる量も少なくなりましたが、ヘルパーさんが工夫して食べやすい物を作ってくれています。
『リンゴ🍎のコンポート』や『トマトのジュレ』美味しそうです。森山さんも大喜び‼
食べられるタイミングも、その時々なので
訪問看護師さんや私たちが伺ったときにも、その都度確認をして
食べられそうなら介助を行っています。
ある日、午後2時半ごろに伺うと、、、眠っています。
顔が赤くて汗びっしょりです。声をかけて、おでこの熱を測ると37.6℃。お腹は38℃を超えてます。
・・・・暖房もきき、布団をしっかりとかけていたので熱がこもっています。
とりあえず、お湯を準備して清拭(身体を拭くこと)を行い
乾いたタオルで水分を拭きとりました。
掛物をしばらく外した状態で、もう一度熱を測り直すと、36℃台になりました。
私が清拭の片づけを行っていると、、、先生の声が聞こえてきます。
「冷凍庫に、モナカアイス 入れてくれてるけど、食べるかい?」と尋ねています。
森山さんは「食べる。。。」と答えています。
片付けを終えて、食べる準備をします。
『3時のおやつはモナカアイス』です。
喉に詰めると悪いので、モナカアイスの皮を残すように、スプーンで一口ずつ口にふくみます。
「おいしいわぁ」と笑顔☻です。
「暖房がきいた暖かいところでのアイスクリーム、美味しいよねぇ」と話しながら
1欠片(4分の1サイズ)食べることができました。
次の日も、午後3時、、、同じように『モナカアイス』を食べました。
アイスクリームを食べ終わったタイミングで、残したモナカの皮を見て
「その(モナカの)皮どうするん? もったいないから食べる」と、森山さんが言います。
しっかりと噛んで飲み込みました。ちょっとびっくり。。
翌日。。。午後3時 やっぱり『モナカアイス』
自分で手に持って食べました。そばで先生が見守ります。
次の日も、午後3時
今日は『モナカアイス』を、自分で手に持つことがでません。
先生が介助して、少しずつ。。。一欠片 食べきりました。「美味しかったぁ」と笑顔です。
私はベッドの足元で、ヘルパーさんや訪問看護師さんの書いてくれた記録ノートを確認しながら
静かに二人の様子をみていました。
(ここは先生と森山さん、二人の時間。。。
食べ終わって、先生をみつめる森山さんの『微笑み』が印象的です)
私が、「森山さんの笑顔、、、『モナリザの微笑み』みたい」と言うと
こちらを向いて、にっこりです。
一度にたくさんは食べることができなくても、一口でも食べてもらえると嬉しくなります。
ヘルパーさんや訪問看護師さんも、きっと同じ思いです。(いつも、ありがとうございます)
記録ノートには
午後3時のバイタルサイン(体温・脈拍・血圧・呼吸状態)と
「モナカアイスを1欠片 食べました」と記載しました。