金曜日、12時半。。。中浦さん(仮名)宅に集まります。
訪問看護師さんが4名、先生と私の合計6名で、創の処置を行います。
中浦さんは50代の男性で、痔瘻がんで大きな手術を受けられ、尿と便の両方とも人工肛門になっています。
足の付け根のリンパの巡りが悪くなり、両足とも2倍以上に腫れあがってます。
下腹や ふともも、足の付け根の皮膚にも がんが再発しており
自分自身で動くことも難しくなっています。
そのためお尻には大きな褥瘡ができており、処置が必要な状態です。
腫瘍から出血することもあり、動かすこともままなりません。
くの字に曲がって腫れあがった両足は、少し角度が変わるだけで、痛みが走ります。
腰の位置と足の角度をみながら、みんなで手順の確認を行います。
テープ式のオムツの中にパットを置き、そこに軟膏を塗って準備します。
オムツの下に敷く大きな吸収シートも、すぐに交換できるように準備します。
腰やお尻まわりを拭くタオルの準備もします。
ベッドの左右に2人ずつ立ち、腰や足の角度を確認しながら
中浦さん自身の気持ちの準備が整うと
上半身側にいる訪問看護師さんの肩に手を回してもらい、
「いち! にぃ! さん!」と、みんなで 10㎝程 体を持ち上げます。
先生は、骨折していると思われる右足の角度を変えないように支えてくれています。
私ともう1人の訪問看護師さんとで
すばやく腰やお尻を拭いて、吸収シートとオムツを変えます。
体をおろしてもらって、、、
中浦さんも、持ち上げてくれたみんなも、一息つきます。
2人の訪問看護師さんは、すぐに次の訪問に向かいます。
残った訪問看護師さん2人が、上半身の角度を40度くらいに保つように支え
ベッドの背を少し下げて、背中を拭いてTシャツを着替えます。
先生が膝と足首の関節を支えながら、下肢をわずかに持ちあげてくれます。
シート型のオムツを足の下に敷き、石鹸の泡で洗い、泡をふき取ったあと
微温湯をかけて洗い流します。
今日の処置は、1時間ほどかかりました。
この間、4人の訪問看護師さんが、ここに集結するのは容易なことではありません。
それでも、「金曜日の12時半」ならと、調整をしてくれたのです。
処置を終えて、中浦さん自身も疲れています。
「お疲れさまでした。また、来週 金曜日にきますね」と、先生と私は次の訪問へ。
翌週、金曜日。。。2階の居室に上がる前に
お母さんに中浦さんのご様子を教えてもらいます。
「今日は、朝9時過ぎからパンと果物食べて、いつも通りよ。
バナナとリンゴ用意したら、イチゴ🍓って言うしねぇ(笑)。
食べた後は、漫画 読んでたわ。すぐに眠ってしまうけどね」
「金曜日の創の交換、、、疲れたって言ってなかった?」と確認すると
「大丈夫よ。今日は『わっしょい』の日やって、笑ってたわ☻」と教えてくれました。
今の状況では、背中やお尻をきれいにし
シーツなど一式交換するのは週に1回。。。それがやっとなのです。
それでも負担はあります。
先生と私には、特別シャイな中浦さん。。。
「大丈夫かな?」と思っていたので
神輿を担ぐときの『わっしょい』に例えてくれたことに、少しほっとしました。
痛みを増強させないように注意しながら、今日もみんなで『わっしょい!』
以前にもお母さんが教えてくれました。
「訪問看護師さんたちとは、ワイワイと話しながらやってるよ。笑い声も聞こえてくるし」と。
毎日、関わってくれている訪問看護師さんたちのおかげです。
訪問看護師さんの存在は、辛抱強い中浦さんの心のよりどころなのだと思います。