和歌山市内の在宅療養支援診療所

お知らせ
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母として…

中学生の女の子と保育園児の男の子、二人の子供のお母さんです。

ご主人に負担をかけたくないと、病院を退院するときにご実家での療養も考えたそうです。

でも、中学生の○○ちゃんが

「お母さん、家にいないと寂しい。お手伝いするから家に帰ってきて欲しい」と言い

家族で相談して自宅に戻られました。

 

 

ある日伺うと、リビングの床に座って裁縫をしていました。

「母親らしいことできてないから、セーラー服のリボンのボタンつけぐらいはしようかなと思ってね」と。

(本当は、生きる姿を見せていること自体が

     親としての最大の役割を果たしていることになっていると思うのですが。。。)

 

普段の痛みの状況を知っている先生と私はびっくりです。

腫瘍が神経に噛みついていることから 左手が常にしびれており、

1日に何回も突発的に電気が走るような激痛が起こると、うずくまって動けなくなるのです。

かなり辛いはずですが、「痛みがましなときに。。。」と頑張っていました。

 

娘の○○ちゃんのことを話してくれます。

「○○が小学生の時、家族で買い物に行ったときにね、ちょっと歩くのが辛かったから

 車いすに乗ろうとしたら、『お母さん、恥ずかしいからやめて』って言われたの」

    (小さなお子さんだとよくあることです)

「この間、『お母さん 前にあんなこと言ってごめんね』って、○○が謝ってくれたの。

 その言葉聞いて、優しく成長したなぁと思うと うれしくてね...」と、涙。

今では、○○ちゃんが車いすを押して、二人で一緒にお散歩に行くこともあります。

 

 

別の日に伺うと、○○ちゃんが家にいます。

「この間お母さんすごく喜んでいたよ。

『車いすのお母さんが恥ずかしいって言ってごめんね』って謝ったこと。

○○ちゃんが、優しく成長しているのがうれしいって泣きながら喜んでいたよ」とお話しました。

○○ちゃんは、

「ふぅ~ん。泣きながら喜ぶの?」 ちょっとはにかんだ笑顔です。

 

「セーラー服のリボンのボタン、お母さん頑張ってつけてくれてたね。良かったね」と伝えると

「でもねぇ。ボタンのつけ方が逆だったから... リボンつけられなかったの」と○○ちゃんが笑いながら教えてくれました。

「そうなんよね...」と、お母さんも笑顔です。

 

お母さんにとって、ボタンつけがどれだけ大変なことかは

毎日そばで様子を見て、お手伝いをしている○○ちゃんは十分わかっていると思います。

 

痛みをおしながら、ボタンをつけてくれたことも、

ボタンつけがうまくいかなかったことも、

お母さんとの大切な思い出の一つになったのではないでしょうか。。。

 

 

若い頃は、キムタクに似ていたという料理上手で優しいお父さん

お仕事のかたわらで、おうちの食事を一手に引き受けてくれました。

コロナ明けで学校が始まると、

○○ちゃんは、お父さんが作ってくれたお弁当のおかずを

キレイに詰めて学校に通ってました。

 

○○ちゃん、今日も元気に学校に行っているかなぁ。

弟の〇ちゃんも、保育園で元気に楽しく遊んでいるかなぁ。

 

先生と二人、家の近くを訪問車で通るたび、そんなことを思っています。