和歌山市内の在宅療養支援診療所

お知らせ
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一喜一憂

私たちは訪問診療を開始する際に、ご家族さんにお願いしていることがあります。

看護記録ならぬ介護日記をつけてもらっています。

週1回の訪問診療では、日々の様子を知るには足らぬところが多いことから、

訪問と訪問の間のご様子を記録頂き、診療の助けにさせて頂いています。

このご家族さんとの交換日記で、印象深いことがありました。。。

 

有田さん(仮名) 70代の男性です。

胆管細胞癌で、骨・肺・肝臓にも転移があります。

  

奥さんは、有田さんの日々の状態を、ノートに書いてくれています。

先生と私は、訪問時に必ずこのノートを見せてもらいます。

一日1ページ。。。 ご主人の様子がよくわかります。

   起きた時間 体温と脈拍(不整脈があるから注意してくれています)

   食事の内容、痛み止めを使った時間、排泄の状況、睡眠の状況 等 

そして、その日の締めくくりに

奥さんの素直な思いも、書いてくれています。

    

そのノートも三冊目になりました。

 (許可を頂けたので、少しだけ抜粋してここに書かせてもらいます)

「とにかく眠いらしい。あまり早く寝られるので私は退屈です」

「今日は一日中寝なかった。大便も自然に出たし、カラオケも40日ぶりにしました。

3曲だけですが歌ってくれました」

「テレビを見ている音で頭が痛いと言われ悲しい。13時30分 浣腸をするけど便がでない。

昼食も食べずに寝てる。こういう時は気難しい。15時に便が出た様子。

15時半におにぎり3個食べました」

「背中が痛いと言いながらも孫とトランプをして遊ぶ。やっぱり私より孫の力は強い!

(孫に)負けました」

「明日は便がでますように!祈り」

  

奥さん自身の体調が思わしくなく、検査を受けたりしていたころです。

「夕食はお好み焼きにしたのですが、いらんと言われ腹が立ち、何にも食べんでいいわと

思いつつおにぎりを3コ作りました。

19時30分頃、食べてました。ついでにとんぷくも飲みました。

自分の体の心配もあるのでよけいに腹が立ちイライラした最悪の一日でした」

翌日のノートには、、、

「昨日の私はいい妻ではありませんでした。反省しています」

   

介護は24時間続きます。お休みもありません。

有田さんの状態の変化に伴って、奥さんのお気持ちも日々変化しています。

ご自身の体調が悪ければ、なおさら気持ちも揺れ動きます。

『一喜一憂』

このノートには、そんな奥さんの日々の心模様が書かれています。

書くことで、ご自身の気持ちを整えているようにも感じます。

  

どちらのお宅でも同じことが言えると思います。

ご家族も、病と そして自分自身に向き合っているんですよね。

   

愚痴をこぼしたくても、こぼせない。。。そんな時もあります。

私たちに、我慢せずに話して下さい。愚痴をこぼしても大丈夫です。

泣きたいときは泣いてください。

ちょっとぐらいご主人(奥さん)と喧嘩をしてもいいのです。

それが日常なのです。

生命(せい)あるからこそできることなのだと思います。

  

今日は、奥さんが書いてくれているノートが三冊目になったことを

有田さんにも伝えました。

有田さんは、奥さんの方を見ながら

「。。。三冊かぁ。。。 ありがとう」と、にっこり!!

奥さんが頑張って介護をしてくれていることは、十分にわかっています。

   

最近は、娘さんも夜は泊まりに来てくれています。

絵をかくのが得意な娘さんは、お母さんの書くノートに

イラストを添えてくれています。ご家族みんなの気持ちがよくわかります。

 

ある日の深夜、2時半

「毎度ありがとうございます」と有田さん。

奥さんは、「夜中に、そんなに言われてね。大笑いしたんよ」と教えてくれました。

しんどいことも多いですが、笑えることもたくさんあります。