ある日のこと
野村さん(仮名) の診察を終えて、玄関先まで来ると
娘さんが、「先生、、、パパにタバコ吸わせたらあかんよね?」と言いました。
先生は、「いいよ。。。でも酸素のあるところでは危ないからね」と話しました。
吸わせてあげたい気持ちは やまやまです。
リザーバーマスクによる高濃度酸素吸入に、高濃度のモルヒネ投与…
今の呼吸の状態から考えると、普段の呼吸をするのもやっとのことなのに、、、
タバコを吸うどころか、吸うところまで移動するのもかなり難しい状況です。
数時間後です。連絡がありました。
『タバコ 吸えました』 🚬
………びっくり!!
野村さんは大満足…。
にっこり笑って「また吸わせて欲しい」と言っていたとのこと。
先生に許可をもらった娘さんは、『パパの願いを叶えてあげたい』と
すぐにケアマネージャーさんに、車いすの手配をお願いしました。
娘さんのご主人も仕事の合間をぬって駆けつけてくれました。
車いすが届くと「吸いに行こか」と野村さん。
娘さんご夫婦とケアマネージャーさんとで、車いすに野村さんを乗せて
部屋から出ました。(大きな段差もあるので大変だったと思います)
タバコを吸っていた『いつもの場所』で、酸素を外して念願だったタバコを吸いました。
いつも通り、立ってタバコを吸ったそうです。
「パパにタバコを吸わせてあげたい」
娘さんの思いと決心、そして行動力・・・ご家族の力の賜物です。
医療用麻薬の注射をしながらも、いつも通りの生活
タバコも吸いました…
医療従事者の想像をはるかに超えたその人の生命力。。。持てる力に驚かされます。
野村さんの生命力は、『パパの日常』を大切に思う娘さんご夫婦の
優しさに支えられています。
野村さんが、立ってタバコ🚬を吸った『いつもの場所』は
長年、お商売をされてきたお店の一角です。
新鮮なおいしい魚と元気と笑顔を届けていたその場所は
『男のプライドがつまった場所』なのだと思います。