アイロンのきいたポロシャツを着て、ソファーに座り、出迎えてくれました。
奥さんと二人三脚で在宅療養を続けてこられました。
倦怠感が強くなっていたのでベッドに休んでもらい、お話をしながら足のマッサージを行いました。
(先生と奥さんは隣の部屋で話しています。)
「家内の作るご飯は何でもおいしいで・・・」
「若いときから仕事もできて、・・・家のこともよくやってくれる」
「僕の面倒も本当によく見てくれるんや・・・感謝してるんやで」
「ありがとうって言いたいのに・・・タイミングがわからんのや」と。
私が、
「日本男児、もうシャイなんだから…『ありがとう』のタイミングは、私が教えるね」と伝えると、
にっこり笑って指でOKサイン。
マッサージを終えてソファーに戻り、奥さんと先生を交えて、お話をしました。
「〇〇さん、今、そのタイミング!」というと、少し照れながら奥さんに「ありがとう」と言いました。
ある朝伺うとベッドに休んでいました。
奥さんが、そばを離れたとき、先生に「もう限界や」とぽつりと話されました。
翌朝訪問し、いつものように声をかけると、閉じていた眼がびっくりしたようにパッっと開きました。
瞳孔が大きくなっていました。血圧と脈は保たれていました。
血糖値が低かったので、奥さんと一緒に砂糖水を作って、口に入れました。
スポンジブラシで何度も湿していると、瞳孔がもとに戻りました。
先生の「また、来るからね」の声に、わずかですが手を握り返しました。
午前の訪問診療をすべて終えたときでした。
呼吸が止まったと連絡を受け、すぐにご自宅に向かいました。
最期は、
パッと目をあけたので、奥さんがそばに行き、声をかけたそうです。
涙を流し、にっこり笑って、静かに呼吸が止まったとのこと。
帰りの車の中で、
先生は「かっこよすぎるな・・・」を繰り返していました。
ふと、助手席から窓の外を見ると、虹が出ていました。
最後に、「また、がんばってよ・・・」とエールを頂いている気がしました。
ご縁を頂き、訪問診療に伺わせて頂いて、本当にありがとうございました。
城北の杜 スタッフ一同
PS.シャイな日本男児の皆さま
アモーレを連発するイタリア人になってとは言いません。
大切な人に、たまには、照れずに、気持ちを表現してみてください。
伝えてもらえると、安心したり、ほっとしたり、とても嬉しい気持ちになります。