和歌山市内の在宅療養支援診療所

お知らせ
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お金持ち?

小野さん(仮名)は70代の男性。

胃癌術後に、肝臓の出入り口のリンパ節再発が原因で胆管炎を繰り返し、黄疸も強くなっています。

   

医療用麻薬の貼り薬を始めたのですが、、、

「これ貼ってから腰が痛くて、かなわん。こんなテープいらん」と言っていると

訪問看護師さんから連絡がありました。

痩せて、動くことも辛くなってきているので、腰が痛くなっています。

床ずれも気になるので、エアマット(褥瘡予防用のマットレス)を勧めるのですが

小野さんは、持病に腰痛があるので「硬めのマットがいい」と、首を縦にはふりません。

    

連絡をもらった先生は、奥さんに電話📞をして様子を確認します。

往診に伺うことになりました。

近くを訪問車で走っていたので、5分もかからずにご自宅に到着しました。

   

小野さんは奥の部屋で休んでいます。

奥さんは「さっきまでこっちの部屋で座ってたんやけど、ベッドに戻ったところよ」と。

「トイレに一緒に歩いて行こうって言うのに、『いかん!』って言うから

尿器で取ってるんよ」と困り顔😓。

    

ベッドに寝ている小野さんを見ると、眼を閉じています。ちょっと難しいお顔。。。

「だいぶ腰が痛いって看護師さんから連絡もらったから、先生と一緒に

様子 見に来ました」と。

いつも通り、バイタルサインを測定して、、、先生の診察も終わりました。

    

先生は、薬を確認しながら、隣の部屋で奥さんとお話をしています。

私は、頭元に近寄り。。。少し小さな声で

小野さんと二人、、、ちょっとだけ『ないしょ話』

「体、痒くない?我慢してない?」黄疸が強くなると、痒みが出るのですが、

幸い、小野さんは痒みがありません。

「日によっても、しんどさ違うしね。ちょっと楽な日もあれば、しんどい日もあるし。。。

一日の中でも楽な時としんどい時とあるからねぇ。辛いよね。。。」

「さっきは動けたのに、動けなくなったり、、、動きたくないってときもあるしね。無理せんでいいよ」と言うと

小野さん やっと目を開けてくれました。

「そうなんや、、、動けるときもあるけど、なんかわからんけど、急に動けやんようになるし。。。。。。

みんな、動け動けって言うてくれるけど、、、自信ないんや。。。」と、お気持ちを教えてくれました。

起き上がると血圧が下がり、ふらっとなるのも怖かったのだと思います。

   

ベッドで横になっている時間が長くなると、体も痛くなってきます。

関節の動きも悪くなります。

しばらくマッサージをして、、、膝から下を揺らしながら

「小野さ~ん、自分で『貧乏ゆすり』できたらいいんやけどねぇ」と言うと

それを聞いていた奥さんが

「お父さん、あんまり『貧乏ゆすり』せんわなぁ。

元気なときでも『貧乏ゆすり』してるところ見たことないわ」と。

「子供の頃は、『貧乏ゆすり』したら、お行儀悪いって言われたもんねぇ」と話していると

「お金持ちやったんやねぇ」と、先生から突っ込みが入りました。

  

それを聞いて、奥さんは大爆笑!! 「金持ち 違うよぉ。。。」

小野さんも、笑ってます。

難しい顔をしていたのに、先生のこの一言に思わず笑ってしまった感じです。

小野さんの表情が少しやわらぎました。良かったです。。。

  

足首の関節を少し自分で動かしてもらいます。

すると「あぁ、、、動きやすなったなぁ」と。

先生は「小野さん、じっと寝てるのも疲れるからね。理学療法士さんに

家まで来てもらって、マッサージしてもらおう」と

リラクゼーションや拘縮予防を目的としたリハビリテーションを勧めました。

  

その日の夕方、さっそく『訪問リハビリテーション』をしてもらえることになりました。

腰の痛みもましになり、体が少し楽になって

「トイレに歩いて行けました」と、訪問看護師さんから連絡が入りました。

  

病状から考えると、『動けている』こと自体がすごいことなのです。

ちょっと、楽になってよかったです。